2013年1月20日にPROPS プロトーク第3回「働き方・生き方・稼ぎ方」が開催されまし
た(http://props.a-ri.jp/536)。

 

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会場:コクヨエコライブオフィスの夕景(提供:PROPS/撮影:楠瀬 友将、以下同)

PROPS プロトークは「土地と建物をめぐる、業界横断型のトークイベント」として2012年9月から全5回(+番外編1回)で建築・不動産業界の抱えるさまざまなテーマについて語り、交流を深める会として行われています。

PROPSのメンバーにはソーシャルメディアやブログなどを用い建築や不動産に対する発言をしている人達が集まっており、立場や地位にとらわれず、それぞれの役割をもってイベントを支えています。たとえば筆者も地方の建築マネジメント会社に勤め、現在は系列のホテルを管理・運営する立場であったりとメンバーの属性は多様です。

前回イベント「開発・オペレーション」の解説も含め、PROPSを”建築界のアノニマス”と評した橋本祐典氏のレビューをご覧いただくと、この異質さをにわかに感じることができるのではないかと思います(http://props.a-ri.jp/755)。

建築や建設、不動産という業界にとらわれず、土地と建物を活かすために必要な情報伝達、そしてマネジメントについて幅広く考えるためにはどのような議論を起こしていけばよいか?という事を考えながらイベントを開催しています。

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懇親会の様子

今回のPROPS プロトークでは2部制を取り、多角的な観点から「働き方・生き方・稼ぎ方」について、トークを行いました。1部では建築家の大久保慈さん、ITを利用した不動産仲介を展開する高杉義征さん、コンストラクションマネージャーの内藤滋義さんを迎え、それぞれの方が突然訪れた転職のきっかけに対してどのような対処をしたのか伺いました。そして転職を経ることによって「キャリア形成」に対してどのような姿勢をとるようになったのか、話して頂きました。

3名のゲストが語ったキャリアの遍歴は、職種の違い、国内企業/外資企業という違い、そして海外での働き方という違いがそれぞれありました。例えば大久保さんがフィンランドで建築設計事務所で働いていた時の経験は、フィンランド建築家組合という職能組合が機能していること、人口面でのスケールの違いから事務所間での流動性が非常に高いことなど、日本の建築士制度との違いがはっきりと現れていて考えさせられるところがありました。

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第1部討論の様子(壇上左より内藤さん、大久保さん、高杉さん)

コメンテータとして、建設業界の技術者の転職を支援している転職エージェントの平野竜太郎さんをお呼びし、建設業界の転職事情について解説をしていただきました。基本的に転職の理由は待遇改善を求めることにあって、それを叶えるためには建設業界外への転職、発注者側に立つことがひとつの道であるということが提示されました。また、安易に待遇改善を求めるよりも資格の取得、経験の蓄積など、明確な武器を持って転職を求めるのが重要だということです。

現在、特に建築業界では稼ぐという事が容易ではない状況が続いています。今回不動産業界、中でもアセットマネジメントやプロパティマネジメントといった金融側に近い職種と比べると、収入の差は顕著であることが改めて示されました。また、建築士資格というライセンスが所得を保証するものになっていない構造面での問題も改めて考えるべきではとも思います。「ならば一企業、一業界に依存せずにどう生きるか」と言うことを考える事が、新たなテーマとして浮かび上がってきたのです。

転職を経験された登壇者のリアルな体験の中から、キャリアとはままならぬものであるが、いま自分が働いている業界にとらわれず、自分の得てきたものを何に活かせるかという広い視野で自らの活路を開くことが大事であるということが、このセッションの結論だったのではないでしょうか。その視野を広げるために、PROPSという場が活用されていくよう努めたいと考えました。

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真剣に討議を聞き入る参加者の皆さん

2部では、「ナリワイ」という新しい働き方、生き方を提唱している伊藤洋志さん、若者支援のNPO・NEWVERYでマンガ家育成の「トキワ荘プロジェクト」を手がける菊池健さん、株式会社ツクルバCCOでシェアワークスペースco-baなどを運営しシェアコミュニティを形成している中村真広さんをお招きし、建築や不動産という業界から離れて、自ら活動の場を生み出している方に、それぞれの場を作ったキッカケ、持続のさせ方、そしてこれからの場のあり方について話を伺いました。

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第2部討論の様子(左より菊地さん、中村さん、伊藤さん、山下さん、司会の平塚さん、納見さん)

またコクヨ株式会社でワークスペースの研究を行なっている山下正太郎さんにコメンテータとしてご参加いただきました。新興企業のワークスペースに現れている新しい働き方のかたちをご紹介いただき、これからのクリエイティブワークスペースには交流を促す仕組みと 、社会に対する意識を具現化する仕掛けが必要だと語りました。またゲストのみなさんの転機に対する楽観性に対しては計画的偶発性理論を引き、偶然性をうまく利用しながらキャリアを形成するために必要なパーソナリティを持っているという分析を示しました。

討議の中では、場の形成プロセスについての議論で会場は盛り上がりを見せました。「人が集まる、コミュニティを形成できる場所を生み出すためには」という問に対して伊藤さん、菊池さん、中村さんがそれぞれ答えた言葉に特徴がありました。「判りやすい名前」がコンセプトを表すという場の設計の根本を語っていただいた菊地さん、抽象的なイメージを仲間と共有することによりコミュニティを広げようとする中村さん、一人でできることに集中しながらも、場に余白を持たせることによって他人にも遊んでもらえる部分を作り出している伊藤さんと、スペースの特色は人の語り方によってこうも違って見えるのかと感じました。自分の人格そのものを理解した上で事業に見合った場所をつくっているという印象があります。建築や不動産の業界内で働く事にこだわらず、むしろその外側からでも自分の求める社会像に必要な場所をつくり得ることを感じ、私自身も心が支えられたような気持ちになりました。

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会場内バーカウンターの様子

PROPSと言う場でキャリアについて議論をするときに、成功した体験だけでなく、失敗をどう乗り越えたかと言う事を語れるかということが、「アノニマス」的な組織として特色になるのではないかと考えた部分もあります。

ただ今回の議論の中では、登壇者が自分たちの魅力を楽しげに語る姿から自然と笑い声が上がり、前向きな話ができる流れが出来上がるのを見ることができました。

また、事業の魅力を説得力をもって伝えるために、事業価値を数値化し目に見えやすくするなどのマーケティング的発想が建築と事業をつなぐための架け橋になるのではないかと考えました。

この話の流れで……というわけではないのですが、次回のPROPS プロトーク第4回では「マーケティング・レイティング」をテーマに開催します。不動産取引の現場で建築物の魅力が「真っ当」に評価されるようになるために、現状の仕組みをいかに変えていきたいかという事を、不動産取引に関わる多様なプレイヤーから話を伺いながら深く議論していきたいと考えています。

 

やました けんたろう/建築マネジメント会社勤務


山下健太郎 (やました・けんたろう)

京都大学工学部建築学科卒業後、株式会社 希望社に入社。コンストラクション・マネジメント事業において発注代行、設計、アットリスク型CM現場管理に従事。2010年よりウィークリーホテル事業に転向し、現在ウィークリー翔ホテル富山の管理・運営を担当。2009年よりPROPSの前身、建築不動産実務クラスタ交流会に参加し以後交流を深め、PROPS結成後は運営に関わる。

PROPS プロトーク

URL: http://props.a-ri.jp

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